『CUT.編集された世界』は本当に「青春SFコメディ」なのか─第1話で見えた作品の射程

ドラマ考察

「記憶が編集されている世界」という設定だけを聞くと、SFガジェットを使った軽めの謎解きドラマを想像する人も多いかもしれません。

公式が掲げるジャンルも「青春SFコメディ」。深夜枠らしい気軽なエンタメ作品を連想させます。

しかし、第1話を見終えた率直な感想は、「これは思っていたよりもずっと内省的で、扱っているテーマが重たい作品かもしれない」というものでした。

「記憶が編集される」という現代的なテーマを掲げた深夜ドラマ『CUT.編集された世界』は、単なるSFコメディの枠に収まりきらない射程を、すでに第1話の時点で見せています。

本記事では、第1話で描かれた内容をもとに、この作品がどんな問いを投げかけようとしているのかを考察していきます。

作品の基本情報とジャンル感

  • 放送局:テレビ朝日「ドラドラ大作戦」枠
  • 放送時間:土曜深夜0時40分〜
  • 主演:窪塚愛流
  • ジャンル:青春SFコメディ(公式表記)
  • 現在の状況:第1話放送済み

公式ジャンルは「青春」「SF」「コメディ」の三本柱ですが、第1話の印象ではコメディ要素は控えめです。

むしろ、SF設定を使って「現代の若者が抱える自己違和感」を描こうとしているように感じられました。

世間で感じられる第一印象

SNSや公式の反応を見る限り、「記憶の編集」というキャッチーな設定と、若手キャストへの期待が先行している印象があります。

深夜枠らしい実験的な作品として、気軽に楽しもうとしている視聴者も多いようです。

一方で、

  • 設定が奇抜すぎて途中で破綻しそう
  • 深夜枠の低予算SFなのでは

といった、やや冷めた見方があるのも事実です。

テーマ自体は現代的ですが、それをどこまで物語として掘り下げられるのかは、第1話の段階ではまだ未知数だと言えるでしょう。

第1話で感じた作品のトーン

第1話を通して強く感じたのは、このドラマが「謎が解ければすっきり終わる」構造に寄っていない点です。

主人公・真中透は、自分の記憶に違和感を覚え、それが「編集されていた」と気づいていきます。
この導入自体はSFミステリとして分かりやすい引きを持っています。

しかし、その先に提示されるのは、

  • なぜ自分の記憶は編集されたのか
  • 編集される前の自分は、本当に受け入れられる存在だったのか

といった、答えの出にくい問いです。

視聴後に残るのは爽快感よりも、少しざらついた感触でした。この後味の悪さこそが、本作の意図なのかもしれません。

物語の軸─このドラマが投げかけている問い

本作の核にあるのは、
「編集された自分と、編集前の自分、どちらが本当の自分なのか」
という問いではないでしょうか。

SNSで自分を演出し、都合の悪い部分を切り取って生きることが当たり前になった現代。
私たちは日常的に、自分自身を「編集」しながら生きています。

このドラマは、それをSF設定として可視化することで、「都合のいい自分で生きることは、本当に幸せなのか」という問いを、視聴者に突きつけているように見えます。

主人公・登場人物の描かれ方の意味

真中透は、公式設定では「明るく人懐っこいムードメーカー」とされています。

しかし第1話で描かれる彼の明るさには、どこか作り物めいた不安定さが感じられます。

周囲との関係がうまくいっているように見える一方で、「本当にこの関係を自分は望んでいたのか」という迷いが、記憶の違和感として表に出ているようにも読み取れます。

サークル仲間たちも含め、誰が味方で、誰が「編集された世界」の一部なのか分からない曖昧さが、人間関係のリアリティを生んでいます。

なぜ単純な謎解きSFで終わらないのか

このドラマが単なる謎解きSFに収まらなそうなのは、
「記憶を取り戻すこと=ハッピーエンド」
という図式を、おそらく採用しないからです。

編集前の記憶には、痛みや失敗、見たくなかった現実が含まれている可能性があります。

それでも主人公は「本当の自分」を選ぶのか、それとも編集された世界に戻りたいと願うのか。

この葛藤こそが、本作の核心だと感じます。

向いている視聴者・向いていない視聴者

向いている視聴者

  • SFやミステリの形を借りた、心理的な揺らぎを描くドラマが好きな人
  • すぐに答えが出ない物語を楽しめる人
  • SNS時代の自己表現や承認欲求について考えたことがある人

向いていない視聴者

  • 明快な答えや爽快なカタルシスを求める人
  • 純粋なコメディとして気軽に笑いたい人
  • SF設定の整合性を厳密に求める人

今後どう評価されそうか

このドラマの評価は、最終的にどこまで「編集された自己」というテーマを掘り下げられるかにかかっていると思います。

もしSF設定を表層的な謎解きとして消費し、「やはり本当の自分が大切」という無難な着地をするなら、惜しまれつつ忘れられる作品になるでしょう。

一方で、編集された自分と本来の自分の境界を曖昧なまま残し、視聴者に問いを投げ返すような終わり方を選ぶなら、深夜枠の中でも記憶に残る作品になる可能性があります。

まとめ

『CUT.編集された世界』は、公式が掲げる「青春SFコメディ」という枠組みを超えて、現代人が抱える「編集された自己」への違和感を描こうとしている作品だと感じます。

第1話の段階では、謎解きの面白さと内省的なテーマが共存しており、今後そのバランスがどう変化していくのかが見どころです。

軽く見られがちな設定の奥に、意外と重たいテーマが潜んでいる。

そのギャップこそが、このドラマの魅力であり、同時にリスクでもあるのではないでしょうか。

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